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うつ嫁はなまると夫とそれと。~嫁がウツになったった~

嫁はうつ病だと思ってたら双極性障害でした。過去離婚目前だった夫婦が、息子と家族三人で嫁の病気を乗り越えていく。(予定)

【別枠】夜も更けたから、黒い話する。6

 

yomeutublog.hatenablog.com

 

 

夫との出会いは職場だった。

 

大学を辞め、アルバイトで生計を立てていた私は、高い時給を求めて派遣社員となった。

店舗販売スタッフとして配属され、そこに別のブランドのスタッフとして入ってきたのが夫だ。

 

初めて夫を見た時の印象は「ひょろいのが来たな」。

 

今となっては貫禄たっぷりに育ってしまったが、当時は日本人女性の平均的身長体重の私と5キロも変わらない体重だった。

ちなみに夫もだいたい日本人男性の平均身長だ。

 

職場は同世代のスタッフが多く、また”仕事”と言う共通ワードのおかげで話の内容に困る事がなかった為、皆仲が良かった。夫と仲良くなるのにも時間はかからなかった。

 

当時、私には彼氏がいた。夫にも彼女がいた。

しかし、私たちは出会ってから数カ月で付き合うことになり、お互いそこそこ長く連れ添ったパートナーをあっけなく捨てた。

私たちは、お互い似た者同士だったのかもしれない。

 

夫には就きたい仕事があった。

私は羨ましかった。

今まで何の趣味もなく、目指す物もなく、行き当たりばったりで生きてきた私には、夫がとてもキラキラして見えた。

 

しかし、数年前の年末、私は妊娠した。

妊娠6週目。

夫は「そっか…そっか…」とうわごとの様に何度も呟いた。

 

結婚してもらえるとは思っていなかった。だって出会って1年も経っていない。それに夫には夢もある。しかしその仕事は激務にもかかわらず薄給。とても貯金も何もないその日暮らしを満喫していた男と女が、子供を養って暮らしていけるような給料ではない。

 

私に何もない代わりに夫には夢をあきらめてほしくなかった。

「結婚しなくていいよ」私はまた両親に頭を下げて実家に暫く厄介になればいい。何も捨てるもののない私には頭を下げる事など何でもない。また仕事ができるようになれば働いて実家を出ればいい。そう思っていた。

 

しかし、夫は夢だった仕事を諦めて結婚する事を選んでくれた。

私はその先ずっと、夫に『結婚してもらった』と思っていた。ただの責任の為に結婚してもらったと。夫の夢を奪ったのは私だと思って生きていた。

 

その後は出産まで目まぐるしく日々が過ぎた。

 

お互い両親には付き合っている事さえ伝えていなかったのに、「初めまして。結婚します。子供もいます。」と何とも親不孝な報告をしに行った。

この時腹の中でどう思ったかは別として、ありがたい事に誰も反対しないで受け入れてもらったのは奇跡だと思う。

 

貯金もないくせに人並みに結婚式もさせてもらった。「蛙の子は蛙ね」と親戚に陰口を叩かれていたのは聞えない振りをした。

 

私はつわりが酷く、早いうちに仕事を辞めた。人生初の専業主婦になった。

そのまま仕事を替えずに続けていた夫の給料は、同年代に比べても良かったので、暮らしには困らなかった。

夫の為に家を綺麗にして、夕飯を作って、帰りを待っているのはとても嬉しかった。

体調の悪い日もあったが、それでも日々成長していくお腹を見ているのが楽しかった。

初めて胎動を感じた日は感動して泣きながら仕事中の夫に電話をした。夫は優しかった。

 

息子は予定日ぴったりに生まれた。私と同じだった。夫とも同じだった。

猿みたいにくしゃくしゃの顔の息子を抱いて、夫と笑いあって幸せだと感じた。

 

でも、私がその幸せを自分で壊したんだ。